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webmaster の従弟は、先頃日本人5人目のスペースシャトルミッションスペシャリスト候補者として
選抜されて、現在、ジョンソン宇宙センターで訓練中です。BBSでは「がんばれ従弟/地球は青い
ぞ」と題した応援ボードを作っていますが、ホームページにも出張所を作ってみました。以下は彼の
近況報告です。


野口聡一の宇宙飛行士訓練計画


野口聡一(のぐちそういち)
宇宙開発事業団(NASDA)
宇宙環境利用システム本部宇宙環境利用推進部
有人宇宙活動推進室搭乗部員

〈略歴〉
 1965年4月15日神奈川県横浜市生まれ。
 1989年3月東京大学工学部航空学科卒業。
 1991年3月同大学航空学専攻修士課程修了。
 1991年4月、石川島播磨重工業株式会社に入社、航空宇宙事業本部技術開発事業部研究開発部
空力グループに所属の後、国際宇宙ステーションの組立・運用に参加するミッションスペシャリスト
(MS:搭乗運用技術者)候補者として1996年6月に宇宙開発事業団に入社。1996年8月よ
り米国航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センター等にて実施されるMS基礎訓練コースに参加
している。


 昨年夏に渡米して以来、早くも6ヶ月が過ぎようとしています。NASA(アメリカ航空宇宙局)
での生活は毎日が新しい体験、勉強の連続ですが、元気に楽しく訓練に励んでおります。新しい年度
を迎えるにあたり、私の宇宙飛行士訓練の様子を簡単にご報告させていただきたいと思います。


1.宇宙飛行士クラス
 NASAでは新しく選ばれたばかりの新米宇宙飛行士を Astronaut Candidate、略してASCAN
(アスキャン)と呼びます。ASCANは2年間に渡り宇宙飛行士としての基礎訓練コースに参加し
ます。
我々は1996年8月から訓練を始めたので、96年組ASCANと呼ばれています。クラスの人数
は44人で、NASAの長い歴史の中でも最大規模のクラスです。このうちアメリカ人は35人、日
本を含む国際パートナーから7ヶ国9人が参加しており、非常に国際色豊かな顔ぶれとなっています。
年齢層も29歳から48歳までと幅広く、みな様々な経歴の持ち主で、とても楽しいクラスです。


2.訓練の概要紹介
 NASAの宇宙飛行士訓練は、テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターで行われま
す。ここではASCAN訓練だけでなく全ての宇宙飛行士の技術訓練や、打ち上げ前の総合訓練も行
われています。
 ASCAN訓練の主な訓練項目に関して簡単にご紹介します。

(1)スペースシャトルシステム訓練
 スペースシャトルを含め、現在のNASA有人宇宙飛行技術の習得を目標とする訓練です。スペー
スシャトルを一通り動かし、異常事態に対応できるようにするためには、電気系統、コンピューター、
ロケットエンジン操作、環境制御システムなどに関して広範な知識を習得する必要があります。それ
らに関する講義を受け、更にシミュレーター訓練でいろいろな状況を想定して実習を行いながら理解
を深めてゆきます。シミュレーター訓練では単にシステムの理解度を見るだけではなく、異常事態発
生時に他のクルーとうまく協力して冷静に対応していく術を学ぶ場でもあり、とても有意義な訓練で
す。また2年目にはスペースシャトルだけでなく宇宙ステーションに関するシステム訓練も予定され
ています。

(2)高性能ジェット機飛行訓練
 NASAでは、宇宙飛行士の基本資質として良いパイロットであることが要求されます。従って、
ASCANは年間100時間の飛行訓練が義務付けられています。訓練に使用する飛行機はT−38
という2人乗りの高性能ジェット練習機で、軽く超音速が出せる「空のスポーツカー」と言われてい
る機種です。我々は週1〜2回のペースでT−38に乗り、操縦訓練、ナビゲーション機器操作、ラ
ジオコミュニケーションなどを行います。いずれも高度の技術と集中力を要する難しい技術ですが、
フライトごとの達成感も非常に大きいので、やりがいのある楽しい訓練です。

(3)宇宙飛行士一般教養講義
 宇宙飛行士として活動するために必要な教養を身につけるための講義です。具体的には宇宙工学、
宇宙医学、天文学、地学、流体力学、地球物理学、気象学、海洋学などの講義を受けました。それら
に加えて、NASAおよび世界の宇宙開発の歴史に関する講義もあり、実際に現場で歴史的瞬間を体
験してきた人達から直接話を聞くことができます。例えばアポロ計画の話では映画「Apollo13」に出
てきたジーン・クランツさん、最初に月面に降りたニール・アームストロングさんが講義をしてくだ
さいました。
 また、講義ではありませんが全米各地に点在しているNASAの研究施設を訪問する見学旅行もあ
ります。この旅行は最先端の宇宙開発技術に触れる機会であると同時にクラスの親睦を深める良いチ
ャンスでもあり、毎回楽しく過ごしています。
 以上の他に、サバイバル訓練、無重力体験飛行訓練、ロシア語学習、大型水槽を使った船外活動
(宇宙遊泳)訓練、ロボットアーム操作訓練などの訓練が行われています。


3.今後の予定
 現時点で予定されている宇宙開発計画をご紹介しておきます。
 まず日本も参加する国際宇宙ステーション計画は、今年度末に建設が始まります。完成までには5
年以上かかる壮大な国際協力プロジェクトですが、既に米国とロシアで宇宙飛行士達の訓練が開始さ
れています。日本の実験モジュール(JEM:Japanese Experimental Module)の打ち上げは2000年
頃の予定です。
 次に日本人宇宙飛行士の予定ですが、今年秋には土井さんがスペースシャトル(STS-87)に搭乗し
ます。日本人初の船外活動(宇宙遊泳)も予定されており、大変楽しみなフライトです。また来年春
には向井さん、来年夏には若田さんのスペースシャトル搭乗が有力視されており、これからしばらく
は日本人宇宙飛行士の活躍が続くことになります。
 最後に我々ASCANの予定ですが、現在の基礎訓練コースは来年春頃まで続きます。訓練コース
修了後に無事NASAから宇宙飛行士として認定を受けると、続いて上級訓練コースに参加しながら
スペースシャトルへの搭乗機会を待つ一方、宇宙開発に関する実務に携わることになります。


 以上、簡単に訓練状況をご報告させて頂きました。NASAという、今までは遠い存在だった場所
に身をおいてみて感じたことは、宇宙開発計画はどれをとっても大変息の長い計画であると共に、多
くの人々の経験と情熱に支えられているということです。スペースシャトルの打ち上げ、ミッション
サポート現場を見ると、宇宙飛行士が無事に宇宙に行くことができるのは、当人達の努力もさること
ながら数百人、いや数千人の技術者達が何年にも渡って積み上げてきた成果によるものだということ
が良くわかります。私が宇宙に行くまでにはまだまだ長い訓練が必要ですが、常に大勢の人達に支え
られているということを忘れずに訓練に励みたいと思います。

                            NASAジョンソン宇宙センターにて
                                       平成9年4月
                                         野口聡一